いつ何が起こるかわからない。
~アンテナは立っているか?~
■あることがキッカケで、人のキャリアが大きく変わることがある。
そんなことを、改めて感じることがありました。
◇『勇者たちへの伝言―いつの日か来た道―(増山実/ハルキ文庫)』という小説があります。
阪急神戸線の西宮北口という駅に、以前あった西宮球場。
その球場を舞台に、様々な人の人生が交錯する、壮大なスケールの話。
とても読みごたえのある小説です。
私が、この小説に興味を持ったのは、その誕生秘話を知る機会があったからです。
作者の増山さんは、長年、放送作家としてのキャリアを積んでいました。
多くの有名なテレビ番組の構成にも携わったことがある方です。
増山さんは、20代の時から「小説を書きたい」と思っていたそうです。
でも、放送作家の仕事が忙しくなり、書く時間を捻出することが難しくなっていました。
書きたいと思っても、ちゃんと書けないままに時間が過ぎていったのです。
でも、あることがキッカケで、小説を世に出すことになります。
そのキッカケとは、“空耳”でした。
増山さんが、ある日、阪急神戸線に乗っている時、こんな車内アナウンスが聞こえてきたのです。
「次は……いつの日か来た道。いつの日か来た道。」
もちろん、そんな駅はありません。
アナウンスが告げていたのは、「西宮北口」
「にしのみやきたぐち」を「いつのひかきたみち」と聞き違えたのでした。
話がここで終わったら、ただの“空耳事件”ですが、増山さんは、ある行動を取ったのです。
西宮北口駅で電車を降りたのです!
そして、空耳に誘われるまま、阪急西宮ガーデンズという、西宮球場の跡地にできたショッピングモール内にあるギャラリーを訪ねます。
そこで、球場のジオラマを見て、「このことを小説に書こう!」と思い立ったそうです。
それが、増山さん51歳の時。
それが、松本清張賞の最終候補まで残り、その後も紆余曲折を経て、ついに念願の作家デビューを果たしたのです。
増山さんが53歳の時だそうです。
■このエピソードから、私はいくつもの学びを得ました。
◇自分のキャリアに影響を与えるイベント(事件、事象)はいつ起こるかわからない。
以前のブログ「残念ながら正解はない」や「その幸運は偶然ではないんです!」でも書きましたが、「キャリアは“偶然”で創られる」
◇周囲で起こる“偶然”を活かすのは、自分の行動。
増山さんは、駅で降りる、という行動を取りました。
小説家デビューを果たすキッカケになったのは、“空耳”。
そして、その夢にグッと近づけたのは、増山さんの取った行動でした。
◇アンテナはいつも立てておく。
偶然を“意味あるもの”と捉えるアンテナを、常に立てておかないとイベントが素通りしてしまいます。
せっかくの偶然がキャッチできないわけです。
■私自身のキャリアも、偶然の連続。
私は、大学を卒業してスグに中国の上海で仕事を始めました。
私のキャリアは、日本ではなく上海でスタートを切ったのです。
そのキッカケは、大学の時に母と何回か行った中国の旅です。
北京、上海、大連、広州、深セン、南京、無錫、蘇州、アモイ、ウルムチ、アクス、海南島……改めて書いてみると、すごくたくさんの都市を回ったのですね。(まだモレがあるかもしれません)
大都市から辺境の地まで、母と旅した経験が、私の視野を大きく拡げてくれました。
大陸のスケールの大きさに魅了されました。
「上海からずっと歩きだしたら、モスクワまで行けるのか、ローマまでだって行けるのか……世界はつながってる、そして世界は広い!」
そして、当時の上海は、これから発展していくという熱気に満ち溢れていました。
「この街で、この熱気にまみれながら、働くぞ」、大学4回生の時には、そう決めていました。
「荷物持ちをしたら、旅行費用は出してあげる」そもそもは、母のこんな一言が、全ての始まりです。
その魅力的な話に、私は飛びつきました。
母が、私にその言葉を私にかけてくれていなかったら、私のキャリアは、全く違うものになっていたでしょう。
経済的には、大変だったと思います。
でも、母は、私に機会(チャンス)をくれた。
私が、自分のキャリアを歩み始めるキッカケを与えてくれた母には、ただただ“感謝”しかありません。
■その後も、数々の偶然があって、今の私があるわけです。
皆さんも、そう考えると、自分のキャリアを左右してきた、たくさんの偶然を思い出すことができるのではないでしょうか。
後で考えると“必然”のようにも思えてくる。
もしかしたら、そういう“運命”だったのかもしれない。
でも、間違いなく、そのとき、それが起こったのは、“偶然”だったのです。
いつ、何が起こるかわかりません。
それは、日々の業務改善につながるような小さな変化のキッカケになるかもしれないし、働き方を変えるような大きな変化のキッカケになるかもしれません。
あなたのアンテナは立っていますか?
(後記)
『勇者たちへの伝言―いつの日か来た道―』は、350ページある大作ですが、時間を忘れて、あっという間に読み終えるとても面白い小説です。
キャリア自創に役立つ名言もたくさん見つかりました。
また紹介させてもらいますね。