“やりたいこと”はなくてもいい。

~Will-Can-Mustの話~

~Will-Can-Mustの話~

■「ウチの会社に入ったら何をやりたいですか?」

新卒の就職面接でのお決まりの質問。応募者は、企業リサーチをそれなりにして、用意してきた答えを言う。

企業側としては、応募者の“熱意”を測る(ウチの会社のことを調べるという“行動”をどれぐらいしているか)質問としては有効だが、その答えの内容をそこまで真剣に捉えることはないでしょう。

そして、「○○さんの希望が叶えられないことも十分あり得ますが、その場合はどうしますか?」と今度は、応募者の“柔軟性”を測る質問をします。

すると、「はい、もちろん、いずれの部署でもやりがいがあると思いますので大丈夫です」と言って両者が安心する。

つまり一種のセレモニー、通過儀礼なわけです。

■ただ、

その通過儀礼を乗り越えるために、学校のキャリアセンターでは、(「あなたは就活したことあるんですか?」と疑いたくなるような)カウンセラーのオジサンから、「やりたいことをハッキリさせなくてはダメだ」とか「夢は?」とか「目標は?」と問い詰められる……。

だから、我々は社会人になる前に刷り込まれるわけです。

「“やりたいこと”がないのは良くないことなんだ」と。

■そして、社会人になって失望するわけです。

「これは私のやりたいことじゃない」とか「別に先輩たちも何かやりたいことがあって働いているわけじゃないみたいだ……」とか「夢を削ってまで生きていくのはイヤだ!」とか。

でも、そもそも社会人になる前に、即席で(カップラーメンを作る間ぐらいに)考えた“やりたいこと”にこだわること自体に無理があると思います。まだ仕事をしたことがない時の考えだから。

アメフトのルールを知らない人に、「どのポジションがいい?オフェンス?ディフェンス?」と尋ねても答えようがないですよね。

“適当に”決めたポジションにいつまでも拘る必要はないのです。

■月日が経つと……

“やりたいこと”については、ほとんど考えなくなります。

その理由はおそらく二つあると思います。

一つは、自分のできることが増え、忙しくなるから(考える時間がなくなるから)。

そしてもう一つは、仕事はやりたいことをするためではなく、生きるため(お金のため)に仕方なくするものだと割り切って考えるようになるから。

試しに(「あなたは就活したことあるんですか?」と疑いたくなるような)カウンセラーのオジサンに聞いてみたらいいと思います。

「あなたは何がやりたいんですか?」って。

■そして、さらに月日が経ち、40代、50代になると……

“やりたいこと”には完全にフタをするようになります。

“やりたいこと”を考えること自体を避けるようになります。

それが、自分の生活に何のプラスももたらさない、食べていくのに必死なのに、そんな“甘っちょろい”ことを言ってても始まらないと。

そして、定年間近……。

この時、再び考えるようになります。

「残りの人生、私は何をやりたいのだろう?」「次の仕事は“やりたいこと”をやりたいなぁ」

でも、答えはなかなか見つかりません。

■そう考えると、だいぶ不思議なことです。

我々は就職する前と定年間近しか“やりたいこと”について考えない。

40年以上も“思考の空白期間”があるわけです。

まるで、長いトンネルをヘッドライトを付けずに走る車のように、走り続けるわけです。

■“やりたいこと”はなくてもいい。

というタイトルには、“職業人生の前半は”という前置きが付きます。

逆に職業人生の後半は“やりたいこと”はあった方がいい、と思います。

■Will(やりたいこと)-Can(できること)-Must(求められること)の話

キャリアデザインの研修の中で“Will-Can-Must”の話をすることがあります。

まず、我々が優先的に考えるべきなのは、Mustです。

ドラッカーも「第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。何をしたいかではないことに留意してほしい」と述べています。

組織やお客様が求めることを正確に把握し、自身ができること=Canを増やしていく。ということです。

それを繰り返していると、周囲から感謝され、“役に立てる喜び”を感じられるはずです。

■“やりたいこと”は勝手にやってくる。

“役に立てる喜び”はやりたいこと=Willの芽生えです。

アドラーの“共同体感覚”を持ち出すまでもなく、我々は、他者との関係性の中で生きています。

仕事においての“やりたいこと”は当然、他者との関係性の中で育まれるものでなければ意味がありません。

だから、職業人生の前半はMust=求められることの中で、Can=できることを増やすこと。

そうすれば、必ず誰のところにもWill=やりたいことが降りてきます。

大事なのは“Willが必ず降りてくる”と信じて、Muat、Canをやり抜けるか、なのでしょう。

■つまり、

①Must⇒②Can⇒③Will⇒④Must⇒⑤Can⇒⑥Willの順番になるわけです。

①まず、求められることの中で

②できることを増やすと

③やりたいことが見えてくる(ここまでが職業人生前半)

④そのやりたいことと求められることの接点を探し

⑤さらに、できることを増やす

⑥さらに、やりたいことが明確になる。

職業人生を長期的視点で俯瞰すると上記のようなスパイラルが回り続けることが美しい、そう思います。

■「オレはパフォーマーだ。観客が求めることをやる!」

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の中で フレディ・マーキュリーが放った言葉です。

我々はまず、フレディの心意気で仕事に臨み、組織やチーム、お客様から求められることを高いレベルで実現すること。

そうすれば、“If you build it, he will come.”

彼(やりたいこと)は向こうからやってくるでしょう。

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